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やがて巫女は部屋に備え付けられた扉を出した。
緊急時以外は使えない代物だが、松葉杖をついたミノタウロスを正規のルートで帰す訳にはいかない。
彼女は言った。
「では、これで失礼させてもらう」
「身体に異常を感じたら、すぐに連絡してください」
ミノタウロスは頷いた。
「なんのこれしき…それより、問題はこの間の台風だな。
木の実がごっそりやられた」
その言葉を聞き巫女の表情は険しいものになった。
「聖王も麦畑がやられて頭を抱えていました」
「あれは酷かったもんね…」
ミノタウロスはゆっくりとした足取りで戻り、扉が閉まった。
その後ろ姿を眺めていた錬金術師が言う。
「ゲートの使用許可が下りるなんて…具合、そうとう悪いんだね」
「ええ、ですがどうしてでしょう…
ミノタウロス殿なら大丈夫だと、心のどこかで安心してしまいます」
巫女が笑うと錬金術師も笑った。
「あ、それ…わかるな!
ミノタウロス殿ってよくわからないけど、彼女に任せとけば大丈夫って安心感あるからね」
僕も"確かに"と納得してしまった。
彼女の大きな背中を見ていると、何となくそう感じてしまうのだ。
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