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『僕に何をさせようというのだ?』
「とりあえずついて来るがよい」
前回はわからなかったが、どうやらこの宮殿は砦としての機能もあるようだ。
整備の行き届いた修練場には弓の標的はもちろん、馬上槍の訓練機などもあり、新米騎士が怒鳴られていた。
「そんなタラタラ走っているから、棒人形の剣が当たるのだ!」
「き、気を付けます!」
「あ、あれは…導師様!」
騎士たちが僕らを見ると、緊張した様子で跪いた。
魔導師は両手を広げて返答している。楽にせよといった感じだろうか。
魔導師は広場で立ち止まると振り返った。
「さて、早速じゃが…乗っても良いか?」
『構わんが、鐙や手綱もないぞ』
「こう見えて馬術の心得くらいあるでの」
魔導師はそういうと軽々と飛び上がって、僕の背に跨った。
ちょっと待て、3メートルくらい離れた場所に立っていたはずだ。
そう思っていたら、全身から赤々とした気が立ち込め始めた。
巫女も驚きのあまり口に手を当てている。
騎士たちの驚きぶりはそれ以上だった。
「こ、これは…!」
僕や魔導師の周囲には紅蓮の炎が渦を巻いていた。
魔導師は「ほほう…」と囁くと、右手の親指と人差し指と小指を立て、弓のような形状にした。
すると炎は彼女の腕の周りに集まり、真っ赤な弓矢となった。
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