リュシアンとババ様

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僕の意識の中で、魔導師の"放て!"という思念が響いた。 引き絞った弦を放すように炎の矢を発射すると、インパクトの瞬間に衝撃が広がった。 炎の矢はまっすぐに進んで行く。 それは目の前にあった藁人形を吹き飛ばし、50メートル離れた壁に激突して砂埃を巻き上げた。 「これリュシアン。こんなに威力が出るなど聞いておらんぞ。 これは始末書ものじゃ」 『すまんな、僕も初めてで加減がわからん』 僕がそう答えると、巫女が深々と頭を下げた。 「申し訳ありません導師様」 「よいよい、壁のことは後で謝っておく。 今は、会議室で詳しい説明をしたい」 「わかりました。お供します」 このようなやり取りを終えると、魔導師は僕らを連れて宮殿に戻った。 それにしても魔導師の大物ぶりには舌を巻く。 城壁を大破させるほどの事故を、まるでうっかり皿を割ったかのような調子で話を進めるのだ。 一般兵がこのような事をしたら解雇ものだろう。 騎士たちは僕らの姿を見えなくなると、城壁に近づいていった。 矢の刺さった場所は無残に崩れ落ち、周囲もヒビだらけになっていた。 「ひえ…ボロボロじゃねーか」 「ちょっと待てよ。この壁…破城槌の攻撃にだって耐えるんだろう!?」 「我々が生身で受けたら…木っ端微塵だな」 「恐ろしい…つくづく敵に回したくないお方だ…」
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