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「おうおう…勇ましいね婆さん!」
「ついにモウロクしちまったか? そこから魔法が届くかよバーカ!」
「ご自慢の馬ともども、的にしてやれ!」
「おう!」
軍艦の砲門がこちらに向いたとき、魔導師はささやいた。
「遠慮はいらんな…」
魔導師の指先に集まったオーラは、まるで真夏の太陽のようだった。
熱は僕のオーラシールドを通り抜けて、ジリジリと毛皮を熱していく。足元を見ると湯気が立ちのぼっていた。
――喜べ魚たちよ。新しい漁礁じゃ
その直後にドン…という衝撃音が響いて突風が吹き荒れた。僕は慌てて足を踏ん張って衝撃に耐えた。
撃ち出された炎の矢は一直線に海賊船の横っ腹を貫いていた。
な、なんだこの威力は…!?
船の船体は真っ二つに折れて、海賊たちの悲鳴が響き渡った。
奴らは飛び降りようとしたが、傾いた船体に引きずられていく。それでも何人かは飛び降りたが、待っていたのは船の出した引き潮だ。次々と海賊は渦に飲まれて沈んでいく。
臨検用の船が体勢を立て直した時、海面には無数のごみだけが漂っていた。
僕らの横に騎士たちが姿を見せた。
「我々の出番…なくなってしまいましたね」
「うむ、連中を少し足止めさせる程度で良かったのじゃが、少々やりすぎたな」
僕は不思議な感覚で、海賊たちの墓標となった船を眺めていた。
そこには海賊の他にも捕虜になった人間がいたかもしれない。それらがまとめて海の藻屑と消えたのだ。人質ごと殺したのならそれは殺戮だ。
しかし、なぜかはわからないが、僕は罪悪感を感じていない。
拳を振り上げて、箱を一つ壊したような、そんな空虚な感覚だけが脳内に残っていた。
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