前哨戦

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魔導師は自分の席に立つと発言した。 「南の守護者…ミノタウロス殿が亡くなった」 巫女や錬金術師だけでなく、堕天使もじっと魔導師に目を向けた。 胸中は様々なのだろう。堕天使は冷たく言った。 「ということは、ポールシフトが近々おこる…という訳か」 魔導師と錬金術師はお互いを見た。 先に発言したのは錬金術師の方だった。 「そのはずなんだけど…古文書に記されたマナの変動が全く起こっていないんだよ」 堕天使は険しい顔をした。 「どういうことだ…?」 「わからん。我々も今…古文書の解析を続けているのだが、 このような事態に見舞われたという事例はないのじゃ」 僕はそっと巫女に尋ねた。 『ポールシフトが起こらなければ…どうなる?』 「マナがさらに減るでしょうから、作物は実らなくなり、風はよどみ、水は枯れ果て、寒い日が続く…」 「まるで、終末の冬だな」 堕天使と目が合い背筋に寒気が走った。 終末の冬という言葉に、天啓、いや魔啓のようなものを感じたのだ。 作物が実らなくなれば、王は食料を外から用意しなければならなくなる。つまり戦争になる。戦争になるということは大勢の人が死に不死者が次々と現れる。不死者が農場や人を襲い更に食料がなくなる。 堕天使はゆっくりと立ち上がった。
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