7人が本棚に入れています
本棚に追加
聖女はしばらく沈黙していたが、やがて言った。
「世間知らずの屍術師が、あの女の格好をしているだけだろう。
出陣する…巫女よリュシアンを借りるぞ」
巫女は黙って頷いた。
聖女は兜をつけると、そのまま宮殿の表に出た。
そこには、白銀の鎧に身を包んだ騎兵たちがずらりと並んでいる。
聖女は僕の隣に立つと叫んだ。
「これより出撃する!」
兵は一斉に叫び声をあげ、聖女はバイザーを下ろして僕の背に跨った。
すると僕の身体は光り輝き、騎士たちは驚きの声を響かせる。
聖女は満足そうに僕を眺めると言った。
「そういえば、海賊船を一撃で沈めたらしいな」
僕は目だけ聖女に向けた。
「戦場では、味方を全員救えないこともある。
犠牲を最小限に抑えるためなら、私もろともで構わん。敵をその角で貫け」
思わず目をつぶった。
『巫女とはだいぶ考え方が違うのだな』
「何だ。巫女殿は命の大切さでも説いたのか?」
『炎で焼かれたり溺れる者の気持ちも考えろ…だそうだ。
呆れるほどの聖人ぶりだ。反吐が出る』
そういうと聖女は僕の頭を小突いた。
「我が友人の侮辱は許さん」
『誰が何と言おうが僕はバイコーンだ。偽善行為に興味はない』
そう答えると、何と聖女は笑った。
「わかった。ならば貴殿には金品という形で報いるとしよう」
どうやら、聖女は人の心がわかる人物のようだ。
『高いぞ』と答えると、彼女は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!