前哨戦

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聖女はしばらく沈黙していたが、やがて言った。 「世間知らずの屍術師が、あの女の格好をしているだけだろう。 出陣する…巫女よリュシアンを借りるぞ」 巫女は黙って頷いた。 聖女は兜をつけると、そのまま宮殿の表に出た。 そこには、白銀の鎧に身を包んだ騎兵たちがずらりと並んでいる。 聖女は僕の隣に立つと叫んだ。 「これより出撃する!」 兵は一斉に叫び声をあげ、聖女はバイザーを下ろして僕の背に跨った。 すると僕の身体は光り輝き、騎士たちは驚きの声を響かせる。 聖女は満足そうに僕を眺めると言った。 「そういえば、海賊船を一撃で沈めたらしいな」 僕は目だけ聖女に向けた。 「戦場では、味方を全員救えないこともある。 犠牲を最小限に抑えるためなら、私もろともで構わん。敵をその角で貫け」 思わず目をつぶった。 『巫女とはだいぶ考え方が違うのだな』 「何だ。巫女殿は命の大切さでも説いたのか?」 『炎で焼かれたり溺れる者の気持ちも考えろ…だそうだ。 呆れるほどの聖人ぶりだ。反吐が出る』 そういうと聖女は僕の頭を小突いた。 「我が友人の侮辱は許さん」 『誰が何と言おうが僕はバイコーンだ。偽善行為に興味はない』 そう答えると、何と聖女は笑った。 「わかった。ならば貴殿には金品という形で報いるとしよう」 どうやら、聖女は人の心がわかる人物のようだ。 『高いぞ』と答えると、彼女は笑った。
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