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「これ以上、申し開きはあるだろうか」
一人の奉行が白洲の上に敷かれた蓙(ござ)に座る侍に尋ねた。尋ねられた侍は雲ひとつ無い空を眺めて虚ろな顔をしていた。この侍は天下の往来の町中で多くの人を斬った事により奉行所にて裁きを受けていた。
「何だ? 空など見おってからに」
「いえ、今日もよく見えるなと思いまして」
「今日も雲ひとつ無い空ではないか。なにが見えると言うのだ」
「何か分からないものが見えるのでございます」
「何か分からないものとは何か説明せい」
侍は「何か分からないもの」について語り始めた。
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