見えてしまった

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飛蚊症とはものを見ているときに黒い虫の様なものが見える状態の事である。人によっては黒い虫では無くアメーバやゴマ粒のような形のこともあり見える形はそれぞれ違う。何故見えるかと言うと眼球の中の硝子体と言う透明な液体にしわが出来てそのしわが網膜に映り視界に入るからである。大体の場合は胎児の際に眼球が形成される時の名残であったり、加齢で網膜が少しずつ剥がれて硝子体の中に浮いてくる自然現象であるから心配する必要は無いのだが…… 「こういうの見えてくると網膜剥離による失明の前兆じゃないかって心配になってくるじゃないか」 「ああ、思い出したよ。プロボクサーなんか眼球殴られた後に変なものが見えるって言うけどそれ網膜が剥がれてるってことだな」 「そうそう、これで何人も引退してるな」 「けど、大半はトシ取ると出るもんだろ」 「俺も眼科に行って瞳孔開いたり眼圧測ったりして検査したけど近視で眼鏡使ってるから余計に網膜引っ張られて剥がれやすいんだと。昔目に何か衝撃とか受けてると忘れてた頃にその衝撃がやってきてボロボロ剥がれて来るんだと。検査は近視から来る後天的な硝子体の汚れって事で丸く収まったよ」 「つまり網膜剥離の前兆では無かったって事か」 「ああ、とりあえずは一安心だよ。けど飛蚊症が鬱陶しいな」 「変なこともあるもんだな」 「眼科の先生も「気にしないのが一番の薬」って言ってたよ。ある意味で成長病や加齢病みたいなもんだからな。増えてきたらダッシュでまた医者に行くよ」 大学生は帰宅する事にした。外に出て空を見上げると雲ひとつ無い晴天であった。大学生の目は飛蚊症が見える事無くまだまだ綺麗な硝子体である。 「図書館に行って糸屑侍の事でも調べるかなぁ」 答えは目の前にあって目の前に無い。                                   おわり
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