7人が本棚に入れています
本棚に追加
「私の魔法を操ったんですか?」
私は聞いていた。
「ああ、そうだよ。離れすぎていて魔法を発動させている暇がなかったんだ。暴走魔法を操った方が早いからね」
教師クラスになると他人の魔法を操ることもできると初めて知った。
私は思い出したように先生から離れようとしたけれど身体が動かなかった。
「医務室に運ぶよ。これ以上は続けられない」
「大丈夫です」
「赤点補修は俺の仕事だから。心配するな」
先生は私を抱えた。
私はというと抵抗もできずになすがまま、医務室に運ばれて治療を受けた。
その一週間後、補修で先生と顔を合わせることになる。
二人きりの気まずい補修だった。
いや、私がひとりで気まずくなっていただけなのだけれど。
先生はしっかり教えてくれるけれどどうにも頭に入ってこない。
「聴いてないな」
先生は笑う。
そのときは私のことなんてなんにも知らなかったんだと思う。
ただデキの悪い生徒くらいにしか思っていなかったはずだ。
私が魔法学院の裏側で、いじめや不祥事に加担しているだなんて。
だから、気が付いたときの先生は少し不機嫌だった。私にだって分かるのだから他の誰かも気が付いたはず。
──屋上で握られた手首がまだ痛む。
私は、あのあと逃げるように屋上をあとにして部屋に閉じ籠った。
ベッドに倒れて手首をさすった。
もう、放っておいて欲しい。
そう告げた私の心はどこかでずきずき痛んでた。
最初のコメントを投稿しよう!