1章 魔法使い

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どうしてだろう。 私は本音を告げたはずなのに。 なんだか気分が重かった。 眠れずに起き上がって屋根に出る。 三日月が綺麗な夜だ、空でも散歩しようと箒を空間から呼び出す。 でも、門限がある。 脱け出したこと知られたらまた叱られそうだと思ったけれどどうにも気分が治まらない。 箒に座って空に飛び出す。 お腹が空いたとかそういった感情もない。 星空が近くなった。 長居ができないので街を廻って、直ぐに戻る。 見回りが来て気がつかれても厄介だった。 ベッドに戻って溜め息をつく。 魔法学院なんて仮初めの幸せしかない。 左手首がきりきり痛む。 なにもこんなにきつく掴まなくても良いのにと本気で思う。 ちょっと私にだけ冷たい。 そんな気がする。 乱暴な男は嫌いだ。 私は先生が苦手だ。 そう気が付いていた。 魔法使いにろくなものはいない。 世間ではそう言われている。 結局、先生も同じ類いなんだと思う。 憂鬱なまま目を閉じるけれど、昂った気持ちは治まらない。 苦しくなるだけで、私のことをどんどん追い詰める。
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