1章 魔法使い

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2ダンスパーティ 魔法学院名物ダンスパーテイ。 男女がペアを組んで踊り明かすだけの催しが近づいていた。 最下級魔法使いの私にはまるで縁のない催しだ。 孤児院出身にドレスなんてない。 魔法で作れるけれども技術が不足している私には関係ないこと。 友人は誘われて渋々参加するという。 みすぼらしい格好の私に魔法を授けてくれる上級生は居なかった。 魔法学院の悪ガキたちはダンスパーテイに参加しない。 古びた倉庫に集まって、悪口を言い合う。 いじめグループの集まり。 標的は一年生の女の子。 手首を縛って、身体を縛って、倉庫の隅に転がしておく。 殴られた頬が腫れている。気を失っているので放置状態だ。グループリーダが保健委員会で治療を得意としているからその子へのいじめは酷かった。 私は見て見ぬふりだ。 明日は我が身というから。 昨日の友は明日の敵、そんな世界が私の居場所だった。 ダンスパーテイの会場は体育館で吹奏楽部が演奏を担当している。 ワルツが風に乗って倉庫まで届く。 「うるさい」 リーダがお菓子を床に叩きつけた。 仲間に入れない苛立ちは誰もが持っている。 ダンスパーテイは優秀者だけが楽しめる娯楽だと言われている。 「担任とか学園長が居なければぶっ壊すのに」 副リーダが継げた。 「誰かやって来てよ」 リーダの無茶振りに全員が目を逸らす。 「そもそもダンスパーテイなんて無駄だよね。だってあたしら処分一歩手前だものね」 リーダが笑って立ち上がり、獲物の方へ近寄ると足で蹴りつけた。
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