1章 魔法使い

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ここに居たくなかったけれど、私の行く場所なんてどこにもない。 「リア、まだ間に合う」 「うるさい」 気持ちがぐちゃぐちゃしていた。 気持ち悪い。 聞きたくないってそう思った。 「知り合いが亡くなって混乱しているのでしょう。ルアン先生。彼女を医務室までつれていってあげてください」 やんわりとした響きは学園長先生の声だった。 医務室──そんなとこ行きたくない。 反論の声さえ出てこない。 気がつけば震えていた。 どうしようもないほど怯えていた。 ひとりにして欲しかった。 「わかりました」 先生が答えた。 手がなくても歩けると思ったけれど、足は動いてくれない。 先生の手が触れた。 いつもより優しい扱いのような気がして私は戸惑っていた。 正直、医務室までどうやってきたか曖昧だった。 座らされたベッドに保険医のサード先生が近づいてくる。 保険医の男の先生で生徒からの人気は高い。ワイシャツに白衣と黒のズボン。私服を見たことがない。 「こんなに震えて。怖かったね」 屈んで瞳を合わせてくる。 「忘れることは難しいけれど、ゆっくり落ち着いていこうか」 「どうせ、殺されるだけなんですよね。私」 「まだ間に合うよ。一年ある」 サード先生が優しくいうけれど、私には戯れ事だった。
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