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ここに居たくなかったけれど、私の行く場所なんてどこにもない。
「リア、まだ間に合う」
「うるさい」
気持ちがぐちゃぐちゃしていた。
気持ち悪い。
聞きたくないってそう思った。
「知り合いが亡くなって混乱しているのでしょう。ルアン先生。彼女を医務室までつれていってあげてください」
やんわりとした響きは学園長先生の声だった。
医務室──そんなとこ行きたくない。
反論の声さえ出てこない。
気がつけば震えていた。
どうしようもないほど怯えていた。
ひとりにして欲しかった。
「わかりました」
先生が答えた。
手がなくても歩けると思ったけれど、足は動いてくれない。
先生の手が触れた。
いつもより優しい扱いのような気がして私は戸惑っていた。
正直、医務室までどうやってきたか曖昧だった。
座らされたベッドに保険医のサード先生が近づいてくる。
保険医の男の先生で生徒からの人気は高い。ワイシャツに白衣と黒のズボン。私服を見たことがない。
「こんなに震えて。怖かったね」
屈んで瞳を合わせてくる。
「忘れることは難しいけれど、ゆっくり落ち着いていこうか」
「どうせ、殺されるだけなんですよね。私」
「まだ間に合うよ。一年ある」
サード先生が優しくいうけれど、私には戯れ事だった。
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