1章 魔法使い

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そうした理由から作られた森には死神の森と皮肉な名前をつけてある。 試験は的に魔法を当てるだけ。 簡単だけど私には難しい。 ピンポイントを狙う為の出力調整ができないんだ。 私の番になって、暗い森に足を踏み入れる。 的を見付ける所からすでに試験だった。 見つけにくい場所の的を潰す方が得点は高い。 安全圏を狙うならば枝の上から覗いている人形だけど。 打ってはいけない的もある。 慎重にあるくいていく。 制限時間は五分。 走って的を見付ける子もいれば、無難な路線を狙う子もいる。 私も無難な場所をと、ふたつに絞る。 幹の陰と草から覗く人形。 両手を組み合わせて、腹の辺りに集中する。 力まなければ、少量で的は吹き飛ぶはず。 「スコール!」 発動語源を発したとき、事件は起きた。 雨粒が的を射ぬくはずだったのに、雨粒は大粒の雨となって私に降り注いだ。 自分の魔法を自分で受けた私は混乱(パニック)を起こして魔法を暴発、あろうことか蜂の巣を攻撃して蜂に襲われかけた。 「動くな!」 それが私を制した言葉だった。 一瞬、何事かと思った矢先に発動していた風が集束し、次の瞬間に蜂を粉砕した。 私が崩れ落ちるのを抱き留めたのが先生だ。 試験の審査員だった先生との不思議な出会いだった。 「操れない魔法なら使わない方がいい。得意分野で攻めるのが基本だよ」 「──」 「聴こえてる? 医務室行こうか?」 私の耳には届いていたけれど、一瞬の出来事が衝撃過ぎた。
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