第8章 急襲

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第8章 急襲

   (1) 「いやもう、あんな綺麗な(かお)して、やることがムチャクチャなんですわ」  夜盗崩れといった風体(ふうてい)の人相の悪い男は、小さな目を精一杯見開いて、懸命にシリルに訴えた。  敵の放った銃弾に脇腹を深く抉られ、昏睡していたシリルが意識を取り戻したのは、撃たれた晩から3日後のことだった。  撃たれてまもなく、シリルは躰の異変に気がついた。かなりマズい状況に陥ったことは、その時点で自覚していた。ともかく確実に逃げきれる状況を確保して、安全な場所まで移動しなければ。頭にあったのはそれだけで、必死で愛機を操縦し、なんとかここならばと思える場所までたどり着いた。  ようやく感情をおもてに出せるようになってきたリュークが、傷を負った自分に気づいて驚くほど不安げな様子を見せているのがわかった。その顔を見て、こんな表情をさせたいわけではないのにと思ったことまでは憶えている。だが、止血剤で応急処置にもならない手当てを終えて以降の記憶は完全に途切れていた。それからよもや、3日も経っていようとは。  不覚すぎる己の失態に、歯噛みせずにはいられなかった。だが、その3日、シリルに付き添って必死に看病にあたったのは、そのリュークだという。
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