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「いやあ、はじめはエラい警戒されちまって大変だったんですわ」
マティアスはそう言って、バツが悪そうに頭を掻いた。もともとの顔相の悪さに加えて前科があるのだから当然だろう。
「ただ、嬢ちゃんも相当切羽詰まってたみてえで、事情説明して敵じゃねえってわかるなり、シリルの兄ィを見ててくれっつって」
マティアスがシリルのイーグルワンより数ランクほど下の空陸両用機、ブラック・バードに乗ってきたとわかるや否や、リュークはすぐに戻るから貸してくれと、マティアスの返事も待たずに飛び乗ったという。そのうえで、もし機体を破損させるようなことがあったら修理代は自分の躰で払うと言い放ち、止めるまもなくエアカー仕様に切り替えると飛び去っていった。
それを聞いたシリルは愕然とした。
「……そだろ。あいつ、操縦……」
「それが、あとで聞いて危うく腰抜かすところでしたわ」
マティアスは心底恐ろしそうな様子で己の逞しい両腕を抱きしめると、ブルブルと身震いした。
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