第8章 急襲

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 マティアスにあとのことを託して消えたリュークは、1時間半ほどで戻ってきた。  後部座席からいろいろ取り出すリュークにどこに行っていたのか尋ねると、最寄りの都市、リマまで行っていたという。テントやエアマット、治療に必要な医療器具や薬剤など、時間的にも閉まっている店が多い中、片っ端から無理やり開けさせて買いそろえてきたということだった。  見かけによらず押しの強いところがあると驚いたのも束の間、山賊のような風体の巨漢は、さらに喫驚(きっきょう)することとなる。もし借りた機体に不具合などが生じるようなことがあった場合は、後日修理費を支払うので言ってほしい。出発前にもおなじことを言っていたリュークがふたたびそう口にしたため、その理由を尋ねたマティアスは、危うくその場で卒倒しそうになった。肝が冷えたなどというものではない。それもそのはず。おとなしやかな麗人は、操縦資格もなければ操縦自体も今回が生まれてはじめての経験であったという。にもかかわらず、見知らぬ場所をエアカーとはいえ、夜間に飛行したというのだからムチャクチャもいいところである。  操縦方法についてはシリルの見よう見まねだったということで、ジェット機であればひとっ飛びであったところをエアカーにしたのも、そういう理由であったらしい。
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