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「だいたい、あんな姿見ちまったら、どっかにぶつけられてようが木っ端微塵にされちまおうが、文句言う気にもなれねえっすよ」
椅子に座りなおしたマティアスは、ポツリと言った。
シリルの手当てにあたるリュークはあまりに必死で、見ているほうが痛々しくなるほどだったという。傍で見ていたマティアスのほうが心配になり、食事や飲み物を調達して幾度か差し入れたが、リュークはそれらに手をつけることさえしなかった。そのことが気掛かりだと、無骨な同業者は太い眉を曇らせた。
「正直、店で見かけたときは、ただ綺麗なばっかでおもしろみのねえ、すましたお人形だと思ってたんですが、あんな姿見たら、こんなオレでも心動かされまさあ」
見かけによらず人情家なのか、マティアスはそう言って洟を啜った。その直後、
「シリルッ!!」
背後のテントから、とうのリュークが飛び出してきた。
すぐ目の前で折りたたみ椅子に座り、煙草を銜える男の姿を見るなり、綺麗なだけのお人形と言われた麗人はその背中にしがみついた。
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