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「へへ。そいつぁ運がよかった。オレとしても、こんなデカいヤマに出くわすなんざぁ滅多にねえことだからな。あんたに請け負ってもらって、なんとしても仲介料をいただかねえとよ」
「いいから早く依頼内容を言え。運搬か? 護衛か?」
「そのどっちもよ」
答えを聞いて、男は、まあそんなとこだろうと頷いた。額が額であることを考えると、おおかた天然水かレアメタルに類する天然資源、もしくは軍事兵器といったところだろう。だが、それにしても500万UKドルとは破格どころの話ではない。そこそこ名の通った大都市の一等地に、即金でプール付きの大豪邸が買える金額である。これまでにも高額の依頼料を積まれた経験はそれなりにあるが、今回の案件は、確実にふた桁ほど飛び抜けていた。
「運び屋としても傭兵としても超一流。あんただからこそ頼める仕事だ」
断言したあとで、髭面の熊男は告げた。
「あるものを、エリュシオンまで運んでもらいたい」
「王都に?」
ああ、と頷いたあとで、テッドはすぐさま付け加えた。
「ただし、ブツについては現場に着くまで明かせないそうだ」
「なんだそりゃ」
話にもならないと、男は途端に関心をなくして鼻哂を放った。そんな胡散臭い依頼に飛びつくほど、金にも仕事にも不自由していなかった。だが、テッドはまあ待てと、早々に見切りをつけようとしたシリルを押しとどめた。
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