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その作品はコンテストで評価されませんでしたが、タイミングが悪かったと思います。とても人気のあるコンテストだったので、ライバルたちのレベルの高い作品が多く並びすぎていたのです。でも、その方はふてくされることなく、言い訳もせず、誰にも文句を言わず、嫌な気持ちを出すことなく、書き続けました。実力を伸ばし続けました。私なんて文句ばかり言ってるのに……
その結果、更にレベルの高い作品を完成させたのです。その作品はコンテストで佳作に選ばれました。選評でも、かなりレベルの高い作品と言われていました。
涙が止まらなくなりました。やっと認めてくれた。大好きなあの人の作品が認められたんだ……酒の飲めない私がコンビニで酒を買って、何も知らない妻に何度も同じことを語りかけていました。「こんなに嬉しいことはない」と。
月日は流れ、五分シリーズという短編集に私の作品が載ることになりました。その嬉しさを一番に伝えたかったのは、勿論その方です。笑いについて一緒に悩み、どうすればみんなが笑顔になってくれるかをずっと考えていた私たちです。そんな考えが認められたよと、何度もメッセージを送りました。その方は、自分のことのように喜んでくれました。
そして今、私は、数年前には思いもよらなかった状況になっています。恋愛というジャンルで大きなイベントの最終選考に残ることができました。さらに、書籍化という、身に余る光栄なことも訪れました。
これは、皆様が応援してくださったお陰です。一緒になって頑張ってくれる仲間がいてくれたからこそです。ですが、同じタイミングで、その方は悩まれていました。優しい方なので何があったかは口にしないですが、相当辛かったようです。
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