プロローグ

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プロローグ

なぜ、こんなことになったのだろうか? つい、この前まで自分は模範的な市民だった。 優秀な軍人で出世も思いのままだった。 どこで選択をあやまった? こんな僻地(へきち)の異端収容所になど志願してきたこと? いや、ここに来なければ、あの人には会えなかった。 将来に未練があるわけでもない。 そんなものは、どうだっていい。 ただ、もう一度だけ、あの人に会いたい。 願うのは、それだけだ。 (キューティーブロンド。マリー……それとも、今はもう別の誰かになっているのか? 君が何者だっていい。あなたに会いたいんだ) だが、忍はあの人を怒らせてしまった。 もう二度と、むこうの世界に行くことすら叶わない。 あの夢の世界。 甘美でポップで危険と冒険に満ちた、摩訶不思議な幻想の世界ーー (私は、あの世界の住人たる資格を失った。あの人に拒絶された……) どこで道をあやまったのか、それはわかる。 だが、これ以外、どうしようがあったのか? ほかに解決方法なんてなかった。 何度、頭のなかで考えても、けっきょく、忍はこうなっていた。 忍は絶望にかられて涙を流す。 冷たい牢のなかで、殺人者として……。
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