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ヒューマノイドのロボットーーつまり、セクサロイドというやつは、病気や仕事の都合で生涯、妻帯できない成人男子のうち、ある一定以上の社会貢献度を持つ者のみが許諾される。
今回の人事異動で、忍にはにわかにその権利があたえられた。ぜひとも資格申請して一体持っていくようにと、父は言った。
忍は断乎、反対した。
(誰でもいいわけじゃない。ましてや機械なんて。好きな女の一人くらい、私にもいたさ。それが愛してはいけない人だったというだけだ)
不倫は犯罪のなかでも、とくに罪が重い。
結婚は両家の親が決めることであり、本人たちが勝手に進めてよいものではない。家柄、身分、二人の遺伝子配列まで、すべてが釣りあっていなければならない。
何よりもまず国家のために、次世代をになう優良な子どもを残さなければならないのだ。
「忍。やはり、照日さまのことか? だから、一生を棒にふってまで、人のきらう収容所勤務など志願したのか?」
口論に疲れて、そう言った父は、急にいくつも老けたように見えた。
「そなたには母の情愛を知らせずに来てしまった。せめて、幸福な結婚をしてくれることを願っていたのだが……」
あのときの父の声が忘れられない。
忍の物思いはボールのハウスキーパーに命じる風間曹長の声でさまされた。
「おまえを今後、こちらの九龍大尉どのの専用機とする。大尉どののご命令に従い、忠実にお仕えするように」
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