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博士は軍医でもあり、軍の階級は中佐である。
植民星の領土をめぐる戦争では活躍したらしいが、本職の心理学の研究のために第一線をしりぞいたということだ。
エレベーターが地下二十階で停止した。
所長室の扉がひらく。
篠山博士はファイルだらけの室内で、一人の男と話していた。カーキ色の服を着ているから、収容者だ。心理テストでもしているのだろうか。
「……夢を見るんです。いつも同じ夢です」
顔色のさえない三十すぎくらいの男だ。疲れたような顔をしている以外、どこにでもいそうな、ごくふつうの男である。やや馬面だが、特徴はそれくらいしか見あたらない。
だが、かるい神経症ていどの患者なら、異端レベルで言えば、ごく初期のEに該当する。レベルBのこの収容所になどいるわけがない。つまり、見ためではわからない異常があるのだ。
「夢かね。どんな夢か思いだせるかね?」
「明瞭に思いだせます」
「では、その夢をーーいや、待った。風間曹長と……黒の軍服、青地に白ぬきの三本線の腕章。君が九龍くんか。しかしまた、これは……」
博士はようやく、忍たちに気づいた。こちらを見ながら、ブツブツつぶやく。
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