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収容者は二千人だが、職員は百名に満たない。収容者のいない、この時間には、ほとんど空席だ。
食堂は講堂もかねているので、収容者全員を収容できる。
そのため、やたらと、だだっ広い。
忍がトースト、フルーツ、スクランブルエッグのかるい朝食のトレーを持って、百人がけの長卓の端にすわると、どこからか風間曹長がやってきて、ぽんと忍の肩をたたいた。
トレーの上の皿は食べかけだから、席を移ってきたのだ。
内地の公共施設でなら、減点ポイント0.5というところだ。
変人たちのお守りという不毛な任務のせいか、それとも変人に感化されてしまうのか、どうも、この島の兵士は規律にルーズなようだ。
監視カメラはエレベーターの昇降口など、要所にしか設置されていない。監視用のインセクトカメラも放されていない。見張られていないという安心感が、そうさせるのだろう。
忍が島に来て、ちょうど一週間になる。
こういう風潮には、まだ、なじめない。
「おはようございます。大尉。少しは、ここになれましたか?」
尉官クラスに下士官が話しかけるにしては、口調もなれなれしい。が、たしかに風間曹長は何くれとなく忍のことを気にかけてくれている。その点は評価すべきだろう。
「おはよう。おおむね生活のペースはつかめた」
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