一章 戒め-2

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「誰でも最初はとまどいますから、心配していたんですよ。ところで、ご家族にメールなどあれば送ります。今日は輸送機の来る日ですので」 収容者の有害な思想が外部にもれないよう、磁気バリアに守られた島からは、パソコンを使ったメール通信さえできない。 あくまで外部とのやりとりは輸送機を通さなければならない。 忍は昨日のうちに作成しておいたメールディスクを、だまってポケットからとりだした。父への謝罪と近況報告がビデオメールで録画されている。 風間曹長は微笑で受けとった。 「承りました。輸送機の到着は予定なら十時ジャストです。天候によって、多少ずれますが」 そのあと、台風の季節のさんたんたる状況を述べる風間曹長の声を聞きながら食事を終えた。 八時十分前に農園に行く。 今日の忍の予定表は、午前中いっぱい農場での作業見まわり、午後からレクリエーションでくつろぐ収容者に、個別の矯正プログラムにそった指導をあたえるというものだ。 教官の予定は週末に次週のスケジュールを自分で申請するので、基本は何をしていてもいい。 収容者たちは約百人のグループにわけられている。教官はそれを何組か受けもつ。忍は今のところ、十一グループから十三グループまでの三グループを任されている。 収容者たちは、ほっといても作業しているので、事実上は教官なんて必要なかった。     
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