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六章 夢の終わりに-3
3
木霊の歌声があたりにひびく。
ナインスドラゴンは聖女の森のはずれで待っていたキメトラとサイレンスに再会した。
「聖女には会えたのニャ?」
「ああ。彼女の歌声が導いてくれるそうだ」
それにしても霧が深い。
視界が真っ白になって何も見えない。
ただ歌声の聞こえる方角にむかって歩いていた。
やわらかな草をふむ感触が続く。
やがて、霧が晴れた。
すると、そこに森はどこにもなかった。あたりは草原だ。
空いちめんを暗雲がおおい、夜のように暗い。
遠くに帝都の白亜の宮殿が見える。中心には高い塔が黒い雲を刺すように伸びている。
聖女の歌声が、まだどこかから聞こえていた。
「聖女の占いどおりだ。帰ってきたぞ。この場所に」
「急ぐニャ。聖女の守護があるうちに帝都に入るニャ」
そうだ。帝都に入るまでは安心できない。
今のナインスドラゴンは聖女の歌声に守られることで、将軍の敷いた結界のなかに侵入しているにすぎない。
「私に乗ってください」と、サイレンスが背をかがめた。
ナインスドラゴンは天馬にまたがり、帝都をめざす。
暗雲が低くたれこめ、異様に近い。今にも空から落ちてきそうだ。
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