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あの黒雲は、ナインスドラゴンが帝都を脱出する日、すでに帝都の空の片隅にかかっていた。あの雲が今は空全体をおおっている。
まるで、ナインスドラゴンの心の不安が、そのまま形になっているかのようだった。
ときおり稲光が走り、白い塔を青白く染める。
「あの塔からキューティーブロンドの匂いがするニャ。でも、にゃんか、また少し匂いが変わってるニャ……」
「急ごう。もう少しだ。たのむぞ。サイレンス」
「まかせてください。ふりおとされないように、しっかり、つかまってください!」
美しい尖塔のたちならぶ夢の都。
真珠のように輝く、なめらかな白い家々が眼下に広がる。
その屋根のあいだを、鳥のように翼のある機械兵や、黒い影ぼうしのようなファントム兵が、大群になって飛んでいた。
ナインスドラゴンは天馬の首にしがみつきながら、おそってくる敵軍に応戦した。機械兵は炎や雷で、ファントムには白竜だけが使える聖なる光の魔法でけちらす。
サイレンスは敵兵のあいだをすばやくぬって、帝都の中心にひときわ高くそびえる塔へむかっていった。
聖女の歌声が刻一刻とかすかになっていく。
聖女の守護が弱まっている。
いつまでもつか、わからない。
「まにあうか?」
「大丈夫! いけます!」
巨大なステンドグラスを体当たりでやぶり、サイレンスは塔のなかへすべりこむ。
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