六章 夢の終わりに-3

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「勝負だ! ファントム将軍。姫を返してもらおう!」 ナインスドラゴンは剣をかまえたが、将軍の仮面でかくされていない口元が、笑みの形を作る。 赤いくちびる。 なめらかな白い肌。 ほっそりとしたあごのライン。 将軍は女のようにきゃしゃだった。 その口元をながめるうちに、ナインスドラゴンは妙に胸さわぎがした。 なんだか……なんだか彼は、あの人に似ている。 将軍は笑いながら、ぶあつい革の手袋をはずした。 「何人かの力を借りたようだが、おまえが、ここまで到達できるとは、じっさい、思ってなかったよ。おまえはもう少しで、せっかく創りあげた私の世界をこわしてしまうところだった。だから、ゆるしてやらないつもりだったが、そんなに私に会いたかったのか?」 この声ーー それに、あのアラバスターのように白い指さき。 立ちすくむナインスドラゴンの前で、将軍はゆっくりと頭髪をおおう布をはずした。そして、仮面を床になげすてる。豪華なブロンドがこぼれ、二つとない麗しいおもてがあらわれる。 それは、たしかに、あの人だった。 だが、キューティーブロンドでも、スティグマのマリーでもない。王女でもない。 もう一つの世界で出会ったばかりのころの、ほんとうの彼の姿だ。     
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