六章 夢の終わりに-3

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「そんな顔をすることはないだろう? おまえは私が人間ではないことには気づいていたはずだ。そうとも。私は人ではない。おまえたち人間が悪魔と呼ぶものだ。 私はおまえのおかげで、すべてを思いだすことができた。おまえは外見が少し、私の兄上に似ているからな」 そう言う彼のおもては、まちがいなく、あの人なのに、表情には、これまで忍が見たこともない毒々しい妖気がただよっていた。 記憶を失っていたころの彼は、むじゃきで子どもっぽかった。しかし、今は悪意のかたまりのように見える。美しい肢体から真っ黒な邪気が透けて見えるかのようだ。 「記憶を失っていたころの私は完全に人間だったからな。それに今の私は、おまえの作りだしたファントム将軍という邪悪な存在としてイメージされている」 「私? 私のイメージが、なんで……」 混乱する忍を、彼は見つめる。 「おまえだって、もともとの姿からは、ずいぶん変わったじゃないか。ここは、そういう世界なんだーーと言ってもわからないだろうな。最初から説明してやろう。 さっき私は自分を悪魔だと言ったが、厳密には少し違う。私たちの世界は、人間たちの住む物質世界にぶらさがっている精神世界だ。人間のイマジネーションから生まれ、人間たちの精神力を糧として存続している。     
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