六章 夢の終わりに-3

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私が悪魔なのは、私の生まれた闇の国が、人間の無意識の欲望を吸収して誕生した世界だからだ。人間の本能が私たち悪魔を誕生させた。 ところで、なぜ、私がここへ来たか? 本来、精神世界の住人は、物質世界にちょくせつ干渉することはない。 だが、私たちの世界で少々、困った問題が起きてね。端的に言えば、ほかの精神世界の住人と領土のうばいあいになった。その結果、新しい精神世界が必要になったんだ。 人間の精神に影響をあたえれば、新しい精神世界が生まれる。 だから私が人間に化身して、物質世界に来たわけだ。ここまではわかるな?」 忍はうなずいた。 忍の従順な態度に満足したようすで、彼は続ける。 「物質世界へ来たばかりの私は、私を構成する精神基盤から離れてしまったので、記憶を失っていた。 私が探していたのは、精神世界に強く影響をおよぼすことのできる人間だ。私たちは巫子と呼んでいる。ふつうはクリエーターに多い。おまえたちの世界はクリエーターが弾圧されているから、探すのが大変だった。 想像力がゆたかな人間。意志力の強い人間。または深い葛藤をかかえている人間もいい。 おまえは、そのどれにも、あてはまった。 私はおまえをえらんで、おまえの夢のなかに最初のベースとなる世界をつむいでいった。     
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