六章 夢の終わりに-3

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もともと闇の国で、私は夢魔だったので、人間の夢の世界にもぐりこむことができる。それゆえ新しい世界を、人間の夢を吸収する世界として創りあげた。 おまえの夢に多くの人間の夢をからめ、さらに夢の供給者である人間を住まわせることによって、にわかづくりの精神世界を、ゆるぎない世界へと急速に高めていった。 本来は物質的な存在である人間は精神世界には住めない。だが、この世界は生まれたばかりで存在が柔軟なのだ。 その人間自身のイメージを具現化する形で、夢の世界に定住できる。物質的人間を精神的人間に変化させたわけだ。鉄も熱してやわらかいうちには形を変えられるだろう? そんなようなものだ。 私の姿がいろいろに変わったのも、そのせいだ。ガーディアンたちの私に対するイメージによって、さまざまに変化した。私は精神的な存在だから、人間の心の影響をもろに受ける。ガーディアンの思う、どんな姿にでも変わるのだ。 もちろん、どちらも、変動期が終わるまでのあいだではあるが。 もうじき、この世界の存在は確固たるものとなる。変動期がおさまり、形が定着する。 そうなれば、もう人間はこの世界に入りこめなくなる。物質を精神的存在に変換する力が失われる。 そう。これが最後のチャンスだ。忍。おまえは私に殺される覚悟で、ここへ来た。おまえの大切なものをすべて、すてて。     
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