一章 戒め-1

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規則どおりに列を守り、オートウォークに流されていく人々。 同じ服、同じ色彩。表情も同じ。 人々を監視するカメラ搭載のインセクト型ロボット。 その映像は、つねに政府の中央管理室へ送られる。 体内に埋めこまれた生体反応プレートからの脳波によって、人々は管理されている。 何もかもが国家によって統制管理された、機能的かつ清浄で健全な社会。礼節を重んじ、おきてに守られた厳格な社会。 生まれたときから適性をしらべられ、適性どおりの道へふりわけられ、定められた職につく。 地位の高い職や特殊な専門職の適性を得られなかった者は、工場などの単純作業にまわされる。 だが、どういうわけか、こうした作業からこぼれおちていく者が、ときおり現れる。適性はないと言われているのに画家になりたがったり、スポーツマンになりたがる。 あるいは、誰でも守れるカンタンな礼節が守れない。 危険思想、精神病などの社会不適合者。 それらを矯正の目的で集めたのが、各地にある不適合者収容所だ。 重犯罪者は植民星送りの強制重労働になるので、国内の収容所にいるのは、軽犯罪者や治る見こみのある異常嗜好者などだ。     
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