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それが樹木や草花の香りのとけた大気の匂いだと、忍は生まれて初めて知った。
わずかの荷物を持っておりると、足の下にやわらかい感触があって、さらにうろたえる。人工芝の上くらいは歩いたことがあるが、それとは違う、もっと弾力のある感触だった。
何もかもが初めてで、忍の知らないことばかり。
「いらっしゃいませ。大尉どの」
いきなり声をかけられた。
もちろん、そこに一個小隊が敬礼で迎えてくれていることには気づいていたが。
お仕着せのグレーの軍服を着用した連中が半数。
同じくお仕着せのカーキ色の作業服をきた連中が、残りの半数。カーキ色のほうは収容者だろう。
忍は気持ちをひきしめた。
「ご苦労。私が九龍だ。君は?」
一人だけ手前に立っている隊長にたずねる。
丸顔の童顔で、忍より若く見えた。腕章は白地に赤の一本線。医療班の曹長であるとわかる。
「風間であります! 物資管理の任を受けております。お見知りおきを」
風間曹長は敬礼をとくと、するっと手を出して、忍のトランクをつかんだ。
「どうぞ。こちらへ。収容所まで案内いたします」
うっそうと樹木の繁茂する森の入口に、四人乗りのホーバークラフトが停めてあった。風間はそこへ忍をつれていく。
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