一章 戒め-1

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あとの者たちは輸送機から物資をおろす作業にかかっていた。それにしても彼らのあいだを忍が通っていくとき、カーキ色の連中から、やたらとため息がもれたのが妙な感じだ。 ホーバークラフトが森のなかを走り始めてから、忍は風間にたずねてみた。 「収容者たちは新しい教官に虐待(ぎゃくたい)されるとでも思っているのだろうか? 私の到着が、ずいぶんと憂うつらしい」 ホーバークラフトは時速三十キロほどのスピードで移動していく。ゆるやかに流れていく景色をながめていた風間が、ニカリと白い歯を見せる。 「大尉があまりお若いので、連中、仰天したのでしょう」 「若いというなら、曹長のほうが若いのではないか?」 「いえ。自分はこれでも大尉よりは年上でしょう。二十八になります。それに自分のは、ただの童顔というやつなので、連中の趣味にはあわないのであります」 なんだか、よくわからない。 「少し暑いな。ここはずっと、この調子か?」 気温も暑いが、とにかく湿度の高さに閉口した。 「収容所の建物に入れば、環境自動調節機能が完備されております。今しばらく、ご辛抱ください」 それきり、とくに会話もなく、どこか自分とは別の世界の夢のように、外の景色をながめていた。 かすかに聞こえてくる潮騒が緑の濃い風景にとけあい、なおさら夢心地へとさそう。     
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