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幸福だった時間
彼、焔は初めはこの世界が好きで幸せな時間を生きていた。
母がいて、父がいて、そして自分を慕ってくれる妹がいた。
この四人家族で日々を送っていた。
この時、彼はまだ中学生で妹は小学四年生だった。
いつもは、両親は仕事でいないことが多かった。
それで二人が帰ってきた場合は寂しさがないように互いに努めていた。
彼の父親は警察官しかも警部クラス。
さらに母親は大学病院の外科医として有名な人だった。
こんなに満たされた幸せは他にあるのだろうか……
しかし、幸せは長続きしなかった。
それは、春過ぎて仄かに暖かみを感じている五月の時、焔と妹で公園で遊んでコンビニに行って手頃なお菓子を買って近くにある公園に行って、そこにあるベンチで座って仲良くお菓子を食べた。
それから、公園で一頻り遊んだ後に夕方六時を告げる金の音が鳴った。
その音に合わせて二人は帰路に着こうと自宅に向かった。
妹の手を繋ぎながら家に帰り着き、ドアを開けるといつもなら母親か父親が作る晩御飯の匂いで満ちるはずなのに何故かそれがなかった。
さらには異様な空気が満ちてるのを二人は肌で感じていた。
「おにいちゃん………」と不安に怯える妹に心配させないように彼女の手を離すまいと強くした。
「大丈夫だ………」
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