少女

1/3
前へ
/17ページ
次へ

少女

話は三年前にさかのぼる。 晴天の真下を、血生臭い風が吹き抜ける。 そんな街でのことだ。 立ち並んだレンガ造りの建物は、どれもこれもが廃墟のようだ。 道の脇にある壁はびっしりと落書きで埋め尽くされて、所々が崩れてしまっている。 道にはガラの悪い少年達がたむろしていて、路肩に停まったボロボロの車の窓には、ベットリと血痕がこびり付いている始末だ。 そこは国に見捨てられた底辺の街。 貧民街(スラム)だった。 法律などない。漂っているのは暴力である。 親がラリった。 友人が死んだ。 恋人が殺された。 そんな混沌が日常的に繰り返されている。 その混沌を食い物にしながら、ギャングやマフィアがのさばる。 そこはそういう街だった。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加