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命の温もりが酷く薄れているのがわかった。
「一人のところを狙った。けど、蓋を開ければ手下がいた。ったく、調べがなってねぇ。とんだ間抜けだ」
「もういい。もういいから。とにかく手当を」
ふとイーノの頬を温かい何かが伝う。
いつの間にかイーノは泣きじゃくってしまっていた。
「……ったく、泣くなよ。……男のくせに……」
そう言われて、イーノは「女よッ」と、ロウを抱きしめてやりたくなる。
けれどその気持ちはグッとこらえた。
手当をしなければ、もう二度とロウを抱きしめられなくなる。
止血。消毒。弾抜き。
そういう技術はこの三年で叩き込まれた。
イーノは声にならない声を発しながら、ロウの上着を外し、シャツを脱がせる。
そこでイーノは真実を知った。
「……ロウ……?」
顕わになったロウの身体は、それは、間違いなく女のソレだ。
傷痕は火傷のようになっているもの、それは確かに乳房を切り取った痕だった。
筋肉でごまかしてはいるものの、腰のくびれと肩のライン、そのしなやかな曲線は男性のものでは到底ない。
確信のために下半身を確認すれば、もう疑いようはなかった。
「なんで隠してたの?」
「隠してたんじゃねぇ。捨ててたんだよ。……この仕事に女は邪魔だ」
それからロウは深呼吸して語る。
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