53人が本棚に入れています
本棚に追加
少女
話は三年前にさかのぼる。
晴天の真下を、血生臭い風が吹き抜ける。
そんな街でのことだ。
立ち並んだレンガ造りの建物は、どれもこれもが廃墟のようだ。
道の脇にある壁はびっしりと落書きで埋め尽くされて、所々が崩れてしまっている。
道にはガラの悪い少年達がたむろしていて、路肩に停まったボロボロの車の窓には、ベットリと血痕がこびり付いている始末だ。
そこは国に見捨てられた底辺の街。
貧民街だった。
法律などない。漂っているのは暴力である。
親がラリった。
友人が死んだ。
恋人が殺された。
そんな混沌が日常的に繰り返されている。
その混沌を食い物にしながら、ギャングやマフィアがのさばる。
そこはそういう街だった。
最初のコメントを投稿しよう!