ロウ

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昼を過ぎても鉄の扉はピクリとも動かない。 さすがにおかしい。 なんだろう。 胸騒ぎがするのだ。 イーノはロウを探しに向かうことにした。 街に出て、ロウのターゲットはすぐに見つかった。 昨晩、ヤクザまがいの金貸しとその手下数名がバーで殺されたと、街中がそんな噂でもちきりだったからだ。 しかし、 「誰が殺したの? その殺し屋はどうなったの?」 誰に尋ねても、その答は返ってこない。 私を捨てて、ロウが逃げた。 いつしかそんな不安が生まれた。 依然として胸騒ぎもあり、イーノは一心不乱で街中を探しまわったのだった。 結局、ロウは見つからぬまま日が暮れる。 心が壊れそうになりながらも、イーノはアジトに戻ることにした。 すると、 アジトに続く階段の手前に、出た時にはなかった赤いシミがある。 血痕だ。 それはポタポタと、どうやら階段を降りてアジトまで繋がっているのだ。 「ロウッ」 イーノは急ぎ、アジトの扉を開ける。 そこにロウはいた。 「ロウッ。ロウッ」 ロウは血まみれだった。 そして酷く青ざめた顔をしている。 「イーノか?」 ロウの視線が泳いでいる。 この距離で見えていないのか。 イーノは慌ててロウに駈け寄る。 「ロウッ。どうしてッ?」 イーノはそっと、ロウの頬に手を当てた。     
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