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決意
それはイーノの誕生日まであと三日、という日の夜のことだった。
空に月はなく、ひどく闇の濃い夜だった。
その夜、母の帰りはとにかく遅かった。
もっともそれは珍しいことではない。
普段ならイーノは自分の部屋で先に眠っているのだが、その日はなんだか寝付けない。三日後への不安からか、どうしても目がさえてしまう。ベッドに入ってはいるものの、彼女は目を見開いて、じっと闇を見詰めていた。
母が帰ってきたのは、夜も随分と更けた頃だ。
随分と賑やかな話声がする。
あのマフィアの男だ。
一緒に酒でも飲んでいたのだろう。
よくあることだ。
イーノはそっと毛布を引き上げて、顔を覆った。
どうせ、二人はいつもの調子で、酔ったままコトを始めるのだろうと予想が付く。普段なら、相変わらず醜悪な親だと、そんな思いを噛み殺せばすむ話だが、けれど今は違う。
3日後に自分もその醜悪なモノになってしまうのだと思うと狂いそうになる。
何も聞きたくない。
イーノはギュッと目を閉じた。
その瞬間だった。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁッ」
母が悲鳴を上げたのが聞こえた。
なんだ?
突然のことに困惑するイーノをよそに、
「なんだッ、テメェッ。俺が誰だかわかってんのかッ」
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