忘れられた絵本

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忘れられた絵本

 私は、この図書館が好きだ。  でも、街の事情とやらでこの図書館は今月末で閉じることが決っている。  今日は、その月末だ。ほとんどの本が持ち出されている。近隣の図書館や学校に送られているのだと言っていた。残された本は、痛みが激しかったり、引き取り手が居なかった本達だ。  閉じることが知らされた時に、私は会社を休んで図書館を訪れることに決めていた。会社の同僚にはバカにされたが、自分が好きな場所がなくなるのだ、そのくらいはいいだろうと思っている。  図書館に残された本は、欲しい人が持ち帰っていい事となっていた。  ただもう痛みが激しかったりする本ばかりで価値があるとは思えない。それでも多くの人が図書館に訪れている。本を漁って内容も見ないで、汚れているか・・・だけを見て持って帰っている人たちが沢山居た。古本として売るつもりなのだろうか?  別にそれはそれでいいと思うだけど・・・これだけの人がいつも図書館に来てくれていたら・・・この半分でも図書館で本を読んでくれていたら、街も財政難を理由にしてこの図書館を閉じようとはしなかったかもしれない。  私は、空いていたテーブルに座って、そんな人たちを眺めていた。     
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