忘れられた絵本

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 家に帰って一緒に読もうと言ってくれた。覚えているとは思えない。娘が、泣きながら握っていたページを私は保管している。娘に、ページを見せながら、話してもいいかもしれない。  あの人の事や、あの子の事を・・・。 ---  姉さんに謝らないと・・・。  姉さんが大事にしていた本・・・絵本を、僕が持ち出してしまったことを・・・。  もう20年以上前のことだが、昨日のように覚えている。  あの日は、姉さんと僕は父に連れられて図書館に行った。姉さんは、本が好きだった。僕は、姉さんが持っている本を横取りするのが好きだった。今なら解る。僕は姉さんにもっとかまってほしかった。だから、姉さんが読んでいる本を奪って居たのだと思う。  あの日も、父が、姉さんに向かって”本が一杯あるところに連れて行ってやる”と言っていたそして、姉さんはすごく喜んでいた。僕は、それがすごく不満だった。そんな場所では、姉さんと遊べない。姉さんの気を引きたくて、姉さんが大事にして毎晩読んでいた本を黙って持ち出した。  父は約束通りに図書館に連れて行った。  自分は、僕と姉さんを絵本がある部屋に預けると、どこかに行ってしまった。今なら解る・・・。浮気相手のところに行ったのだろう。姉さんは、沢山の本に囲まれて幸せそうにしていた。絵本の読み聞かせのような事をしていて、それを熱心に聞いていた。     
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