忘れられた絵本

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 僕は、姉さんが大事にしていた絵本を取り出して破いた。なんでそんな事をしたのかは覚えていないが、そうすれば姉さんが僕の方を見てくれると思った。  しかし、それは違っていた。  姉さんは、僕が破いたページを手にとって、泣き崩れたのだ。  それから・・・僕は、姉さんの絵本を持って、図書館を飛び出した。よく覚えていないが、それから父と一緒に生活する事になった。  その父が3年前にガンで死んだ。僕の大学卒業と就職を見届けてからだ。  僕は、父と二人暮らしになっていた。子供の頃には、新しいお母さんだと紹介された人も居たが、僕が小学校にあがる頃からは二人暮らしだった。  二十歳になった時に、父が教えてくれた。自分がガンだという事と一緒に・・・だ。  母さんだと思っていた人は、再婚だと・・・籍は入れていないから正確には再婚ではないらしい・・・姉さんは母さんの連れ子だ。あの日図書館に連れて行ったのは、姉さんを置き去りにして僕だけを連れ出すつもりだったのだと言っていた。その後、新しい人ともうまく行かなくて、僕と二人暮らしになった事を謝っていた。  それから二年。父は治療を拒否して、死んでいった。葬儀は、父が勤めていた会社の社長が手配してくれた。退職金が出せない代わりだと言ってくれた。  明日。     
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