忘れられた絵本

2/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 喧騒と言うのだろうか、普段は静かな図書館が今日は話し声だけではなく・・・言い争いの様な声まで聞こえてくる。  顔なじみになった職員さんが話しかけてくれる 「今日で最後ですね」 「お疲れ様です。この後は?」 「私ですか?」 「えぇ」 「別の図書館で働く事も考えたのですが、そんな気持ちにもなれないので、どこかで”本”に関わる仕事を探す事にしますよ」 「そうなのですね」 「えぇこんな状態ですが、貴女に一冊の出会いがある事を祈っています」 「ありがとうございます」  一冊の出会い・・・かぁこの図書館では、本当にいろんな本を読んだ。始めてきたのは、小学校にあがる前だったと思う。お父さんに連れられて、”沢山本があるところに連れて行ってやる”と言われて喜んだ記憶がある。それから、何度か連れてきてくれた記憶があるけど・・・小学校に上がる頃には、もう1人で来ていた。あれ?1人だったのかな?誰かと一緒に来た事もあると思うけど・・・思い出せない。  辺りを見回すと、普段の図書館が戻りつつ有る。本がなくなった棚が寂しく見える以外は変わりがない風景が戻ってきた。  本の転売目的で来ていた人たちはほとんど姿を消していた。一冊十円にもならないだろう本を得るために、朝から並んで・・・ご苦労な事だな。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!