忘れられた絵本

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 残っているのは普段から図書館を使っていた人たちだ。話をした事は無いが、よく見かける人たちだ。街中で見かけたら会釈くらいはする関係になっている。  皆、本が好きなのだろう。残された本を一冊一冊取り上げてページをめくっている。そして、そっと棚に戻している。  私と同じ考えなのだろう。誰か、他の人が持って帰るかもしれない。最後に残っていたら持って帰ろうと思っているのだろう。私は、いつものように本を持ってきてページをめくっている。何度か読んだことがある本だ。この本の面白いところは、犯人当てを、欄外で読者がやっている事だ。いたずら書きで犯人の名前を書き込む人が多い中少し違ったいたずら書きだ。”俺はここが伏線だと思う”という書き込みに、”残念ここは伏線ではない。伏線に見せたダミーで本当の伏線は少し前にある”とか書き込まれている。実際は、両方共伏線でもなんでもないのだが、そういう書き込みがされているのだ。いたずら書きはダメだが、ちょっとした遊び心が見られる書き込みは好きだ。  違う本には読めない漢字なのだろうか、マーカーで印を付けて欄外に読みを書いている小説もある。  夏休みの課題図書になっていた小説の最後に感想文が挟まれていた事もあった。     
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