忘れられた絵本

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 私は、この図書館でかなりの時間を過ごしてきたのだろう。沢山の本と出会った。そして、沢山の本を読んだ。沢山の人の考えにふれる事ができた・・・そして、沢山の事を知った。  今日この図書館は時間を止めてしまう。  私は残された本の中から一冊だけ持って帰ろうと思っている。どの本にするのかはまだ決めていない。  本を読みながら、最後に借りていく一冊を決めようと思っている。貸出禁止の本でも今日は大丈夫と聞いている。  何冊も本をめくっている。  私の近くに、常連さん達が本を持ってきて読み漁っている。そして、本の山が築かれている。持って帰るのかな?貸出は、3冊までだが今日は大丈夫なのかな?  ボロボロの本を、懐かしむように読んでいる人も居る。  古い古い雑誌を見つけて、笑顔でページをめくっている人も居る。  その人にしかわからない最高の一冊なのかもしれない。  どのくらい時間が経ったのだろう。  図書館に夕日が差し込んでくる。もう閉館の時間だろう。最後の一冊を選びきれていない。  図書館を最後に一周回ってみる事にした。普段足を向けない場所にも本は有る。  普段は、子供に読み聞かせをおこなっている場所がある。絵本や童話などが置かれていた。  棚に一冊のボロボロの絵本が残されていた。     
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