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本好きのあの娘が選んだ最後の一冊か・・・。本をあまり読まない私にはわからない感覚なのだろうな。
何気なくどんな本なのか気になって確認した。
「え?」
その本は、一冊の絵本だった。
私に・・・ううん。私たち家族にとって、忘れられない絵本だ。あの人が娘にと買ってきた絵本だ。
この汚れて破れている表紙に見覚えがある。蝶になりたい芋虫姉弟の話だ。綺麗な蝶になりたい芋虫の姉弟が、蝶になるために、いろんな虫に方法を聞いて歩く。最後・・・どうなるのだっけ?
あの娘は、この本を覚えていて、この本を選んだの?
でも、覚えているとは思えない。あの人の事も、あの子の事も忘れてしまっている。
あの娘が5歳くらいで、あの子が3歳だったはず。
あの人に連れられて、図書館に行って・・・そして、あの人とあの子は帰ってこなかった。
今、どうしているのかわからない。生きているかもわからない。失踪届を出した時に一度連絡があった。
ただ一言だけの連絡だった。
それから、あの娘と二人暮らしだ。
芋虫姉弟の最後が気になって、ページを開いた。
気丈に振る舞う姉芋虫。泣き虫の弟芋虫を連れて歩く。
虫たちは、親切に教えてくれる虫もいれば、イジワルに嘘を教える虫も居る。
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