忘れられた絵本

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 蛾に出会って、お父さん蝶とお母さん蝶に聞けば解るよと教えられる。  絵本はここでページが破られてしまっていた。  最後のページは、蝶になった姉弟が()()する場面で終わっている。  絵本の最後のページにメモが残されていた。  誰かのいたずらだろうか?汚れた本にふさわしくない綺麗なメモだ、最後に手にとった、あの娘に向けたメッセージなのだろうか?  これは見ないほうがいいだろう。  あの娘が本を読む時に、一緒に見せてもらおう。 「あれ?お母さん。おかえり、ごめん、寝ちゃった」 「いいよ。ご飯にしようか?」 「うーん。そうだ。お母さん。今日、私が出すから食べに行かない!?」  娘はそう言って私の手を引っ張って、駐車場に停めてある車に乗り込んで、近くの定食屋に連れて行った。  そして、今日一日のことを話してくれた。  沢山、本を読んだこと、本を読む人を見ていた事。  そして、図書館が無くなって寂しいという事。  最後に借りたのが”芋虫姉弟の大冒険”という絵本であること。なぜか、最後に一冊だけ絵本が残されていて、寂しそうだったからという事や、自分と同い年だったとか・・・いろいろ話を聞かせてくれた。  あの絵本は、娘にとって”最高の一冊”なのだろう。     
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