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「やべぇ!完全に寝過ごした!!10時迄に間に合うか!?」
男の名前は静寂 蓮司(しじま れんじ)
最終学歴中卒のフリーターである。
蓮司「あーくそ」
蓮司は赤に変わった信号を見て、やむなく足を止める。
子供「ブーンブーン」
近所の子供だろうか。飛行機のおもちゃを振り回してはしゃいでいる。その様子を蓮司は何気無く横目に眺めていた。
子供「あっ!」
その時、手を滑らしたのか子供の持つおもちゃが車道に投げ出された。
子供「ぼくの飛行機!」
その子供は車道に落ちたおもちゃを拾いに行こうとしていた。横から来るトラックに目も向けず、子供は車道に飛びだす。
蓮司「なっ!おいガキっ!!」
よそ見でもしているのか、トラックは減速しない。
蓮司「クソが!!」
気付けば蓮司は車道に飛び込んでいた。
呆然と立ち尽くす子供の肩を掴み、力任せに後ろに突き飛ばす。
目前に迫る車体。
ドンッと、鈍い音が響く。骨がいくつも砕けるのがわかる。トラックは衝撃に気付いてからブレーキを踏んだ。蓮司の体は20m程引きずられて、無惨な姿で投げ出された。まだ微かに息はある、だがもう痛みの感覚が無い。
(あぁ、死ぬんだな俺)
薄れる意識の中、泣き喚く子供の声を聞いた。静寂 蓮司の最期にあった感情…それは安堵であった。
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