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リーディスは寝坊を詫びたが、相手の反応は薄い。
共に入店し、席に着いてからと言うものの、彼女は一度も目を合わせてくれなかった。
ーーまずいなぁ。これは相当怒ってるぞ。
婚約者の冷たい態度に激しく動揺した。
平静を装いながらも、不自然な量のミートパスタを一口で頬張ってしまう。
「ねぇ、リーディス。話があるの」
「ゴフッ! うん……なんだい?」
慌てて口の中を空にしたので、リーディスの喉は悲鳴をあげた。
苦痛のあまりに水の入ったグラスに手を伸ばす。
エルイーザはというと、そんな彼を気遣うこと無く、静かに続けた。
「……別れましょう」
「えっ!?」
リーディスにとって寝耳に水だった。
なにせ2人は将来を誓い合った中だ。
所帯を持つのに十分な稼ぎが無いため、今のところ婚姻関係を結んではいないが、ゆくゆくは……と考えていたのだ。
それが、なぜ。
リーディスの思考は混乱を極めた。
「ど、どうしたんだよ急に! 一緒になろうって約束したろ?」
「あなた……職業が『勇者』じゃない。勇気があっても、収入がほとんど無いんだもの」
「で、でも! オレが強くなったら大きな依頼も受けられるようになるんだ! 一年、いや半年。それだけ待ってくれたら……」
すがり付くリーディス。
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