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「努力、それが免罪符になりますか? あなたはエルイーザさんに相応しくありません。見てごらんなさい、この美しさを。艶(あで)やかな姿を。さながら痴女……コホン、女神そのものです。口先だけの男が娶って良い人物ではありませんよ」
マリウス、危うく口が滑りかける。
だが流石はベテラン役者。
即刻リカバリーを果たし、進行の妨げになることを未然に防いだ。
更に言葉を畳み掛けていき、小さな失態を過去のものにした。
「ご存じの通り、彼女には病身の父親がいます。私には最先端の医療を受けさせる用意があります……が、あなたはどうです? 自分の生活すら保てないあなたが、何をしてやれます?」
「それは、それは……!」
「身の程を理解したら、2度と妄言は吐かぬように。そして、エルイーザさんの前に現れないでください」
マリウスにエスコートされ、エルイーザも静かに立ち上がった。
テーブルの上には銀貨1枚が置かれている。
手切れ金である。
あまりの仕打ちに引き留めようとしたが、伸ばした手はマリウスによって払われてしまう。
「待ってくれ、エルイーザ!」
「さようなら……リーディス」
悠々と立ち去る2人の姿を、彼はただ見つめる事しか出来なかった。
店内はすっかり静まり返っている。
窓からは相変わらず暖かな日差しが降り注ぎ、卓上の銀貨を照らし続けた。
【ロードが完了しました】
場面は切り替わり、城下町の大通りとなった。
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