2.欺瞞に満ちた世界で

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 あの日──。誕生日の次の週。頼まれて起こしに行ったのがばかだった。  たぶらかされ付け込まれ、半ば同意で理壱してしまった。流されたとはいえ、幼かった頃の私はこうなるとは思わなかっただろう。  あの時、理壱に興味なんか持たずに拒絶していたら、写真を撮られなかったし、理壱の都合に振り回されてする毎日じゃなかったのに。  でも、嫌なのに、嫌じゃない。  理壱に触られると気持ちがいい。  ここのところ、ずっと考えている。  理壱のことが、すき……なのかもなんて。  触られて気持ちがいいのは、好きだから。たぶんきっとそうだ。  私が高校を卒業しちゃえば、先生と生徒じゃなくなる。十歳違いの年の差カップルなんて世の中には沢山いるから気にならない。  だけど理壱は従兄だ。兄妹じゃなくても近親者には変わりない。そう思うと後ろめたく思う。  後ろめたくても、求められるまま応えてしまうのは、好きだからなんだ。  ――――そう思わなきゃ……つらい。  理壱とこうなってもう三ヶ月。今月も生理がまだ来ない。  一度もゴムを着けてくれない理壱は、外に出さずに中の最奥に出ようになった。  付き合ってもないのに妊娠しちゃったら……。きっと、理壱もパパもママも反対する。  だいたい妊娠なんてまだ早いし、赤ちゃんなんてムリだよ。たとえ産んでも育てられない。  だって、そんなの、考えてない。この年で妊娠するのも、赤ちゃんがどうのとかも。  絶対にムリだ。そんな責任取れない。  怖くて不安でざわついてしょうがないけど、病院には行けない。ドラッグストアで妊娠検査薬を買うのも怖くてできない。  このままじゃいけないのはわかっているから、検査薬を誰にも見つからないようにネットで買った。  今日は学校があったから、ぺちゃんこのバッグに検査薬を入れた。家で検査すると親にバレる可能性があったから、遠くの駅まで行って検査をするつもりだ。  電車に揺られ見慣れない景色をぼーっと眺めた。  こわい。どうしよう。誰に相談したらいい?  考えても考えも気持ちもまとまらない。  乗り越し区分を支払った駅に不安を覚え、バッグをぎゅっと抱きしめ、背中を丸めてトイレへ向かった。    ――――検査の結果は陰性だった。  身体の力が抜けて、壁にもたれていないとしゃがめないぐらい安心して、ぼろぼろ泣いた。  好きでいても、誰からも祝福されない妊娠は、ぜったいにしないほうがいい。 「……りいち」  好きなのに、ずっと好きなのに。  理壱の赤ちゃんを私は一生産んじゃいけない現実が悲しくてたまらなかった。  
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