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祖父から見せてもらった本がいわゆる“禁書”と呼ばれるものだったことを知ったのは、祖父がどこかに連れて行かれて、わたしたち家族はもう二度と会えないという説明を受けてから。
それから、その本は“書庫”――禁書がしまわれる場所に回収されて、幼いわたしはいつも読んでいた本を急に取られてしまったことがずっと気になってて、みんなに聞いて回ったりすることだってあった。
でも、結局その本を読むことはできなくて。
だから、記憶にしかないその本の中身のことを、わたしはこう覚えている。
“この街の外には、空の下に生きる人たちがいる”。
街の外のことは、誰も知らない。というより、それこそ鳥のように空を飛べない限り、知りようがない。
街の端は、都市議会の管理する場所になっている。といっても厳重な建物があるわけではなくて、越えれば即落下――という境界の柵に人が近寄らないように見張っている人がいるだけ。これは当番制みたいなもので、わたしも何度かやったことがある。
そのときに柵の向こうを覗いたとき、街の外はお祖父様の本の内容が信じられないくらいに真っ青な空だけだった。
遥か下に見下ろす雲の海原、その更に下に人が生きている? そこには水でできた海があって、高い地面やもっと栄えた街があって……、そんなおとぎ話みたいなこと、本当にあるのかな?
もちろん、心配性の母にはそんなことは言えないけれど、それでも、わたしは夢見ている。
この街の外にも、きっと人の住む世界がある、って!
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